登山口のバス停目の前 陣馬山登山客の憩いの場「鈴木商店」
「陣馬登山口」バス停の目の前にある「鈴木商店」。パンやお菓子、ビールやジュースに日用品、地域の特産品までなんでも売っている昔ながらの商店だ。戦後まもない昭和23年に開店して以来、70年以上に渡って地域の暮らしを支えてきた。現在の店主である鈴木彰・美代子さんご夫婦で三代目になる。

戦後は自動車も大型スーパーもなく、地域の商店は暮らしに不可欠な存在だった。初代は自転車に乗って隣町の山梨県上野原市まで仕入れに行っていたそうだ。近くに大きな工場があったときには、肉や魚などの生鮮食品も置くほど賑わっていた。「パートの人が50人ぐらいいて、4時に仕事が終わるとバーっと買いに来てくれてね。月末に給料が入ったらお金を払うからっていう感じでみんなツケにしていた。そういういい時代があったよね」と、彰さんは当時を懐かしく振り返る。

鈴木商店では代々、男性は外に働きに出て、女性が中心となって店を切り盛りしてきた。そうすることで、長く続けることができたという。また、目の前が「ふじの体験の森やませみ」という自然体験施設であり、利用者がときおり買い物に来てくれること、陣馬山登山口にあって、登山客の利用が多いことも力になった。
実は、登山客やトレイルランナーには、鈴木商店は「陣馬山登山の憩いの場」として知られている。登山前にパンやお菓子、飲み物を購入していく人に加え、多いのは、下山後にバスを待っている間、ビールやジュースを買って、ひと休みする人々。登山で汗を掻いたあと、ここで飲むビールを楽しみに、毎月のように寄ってくれる常連の登山客もいるそうだ。外にはベンチも用意。レジ横には、そんな登山客のために、小分けになったおつまみやソーセージをバラ売りしている。

また「藤野ゆずワイン」や「藤野ゆず坊サイダー」、日本酒「丹沢ほまれ」など、お土産にもなる地域の特産品も多数取り揃えている。登山客が買って帰り、気に入ってわざわざまた買いに来てくれることもある。そんなお客さんとの会話が、日々の楽しみだと美代子さんは言う。「店をやっていると自分のためにもなるんですね。お客さんには、私たちが全然知らないいろいろなことをお話してもらえる。それが楽しいんだよね」

数年前に彰さんが退職してからは、夫婦で店に立つようになった。定休日の火曜日には、二人で相模原市内まで仕入れに出かけている。休みはあってないようなものだが、店はできるだけ長く続けていきたいと考えている。「近くにほかにお店がなくなっちゃったから。地域の方たちからもやめないでくれって言われています。特に高齢の方はないと困ると思うので、これからも続けていきたいです」とお二人。地域の暮らしを支えるインフラとして、登山客の憩いの場として、これからも鈴木商店はまちの風景であり続ける。
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鈴木商店
神奈川県相模原市緑区澤井1040
042-687-2636
JR中央本線藤野駅よりバス「陣馬登山口・和田行き」にて、バス停「陣馬登山口」下車、徒歩30秒。もしくはJR藤野駅より徒歩26分。
営業時間 9:00~19:00
定休日 毎週火曜日